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次のような表現は混乱を招く恐れがあります。少なくとも私は混乱しました。

Setting the Communication Mode to Enable or Disable Encryption

これは、「通信モードを設定することによって暗号機能を有効または無効にする」ということが言いたいのですが、「AをBまたはCに設定する」ということを表す「Set A to B or C」という形式によく似ているため、「通信モードを Enable (Encryption)またはDisable Encryptionに設定する」という意味で解釈しようとして混乱する可能性があります。
特にこの例のように各単語の頭文字が大文字になっている見出しでは、「Enable」と「Disable」が画面表記(あるいはボタン名)に見えるため、誤解を招きやすくなると思います。一意に解釈できる書き方を以下に示します。

Specifying the Communication Mode to Enable or Disable Encryption
Configuring the Communication Mode to Enable or Disable Encryption
Enabling or Disabling Encryption by Setting the Communication Mode
Setting the Communication Mode in Order to Enable or Disable Encryption


補足
Microsoft Manual of Style Third Edition では、以下のような記述があります。

in order to    A verbose phrase that is usually unnecessary. Use just to instead.

つまり、「in order to」はたいていの場合、冗長な語句であるので、単に「to」を使いなさいということです。「たいていの場合」ですから、この場合は、明快な文にするため、あえて「in order to」と書き出すということになります。


色々な訳し方があるかと思いますが、ネットを検索すると
以下の2つの書き方があるというところが興味深いです。

Commands are separated by semicolons.
Commands are separated by a semicolon.

一般的に考えると、前者が普通の書き方ではないかと思います。
しかし、IBM社やMicrosoft社のウエブサイトでも後者の書き方が
見受けられます。

なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?

テクニカルライティングでは、情報を的確に伝えなければなりません。
前者の書き方の場合、2つのコマンドの間にいくつセミコロンが
入るのかは明確ではありません。常識的に考えれば、1つなのでしょうが、
1つであると明示されているわけではないのです。

そこで、後者の書き方が使われることがあると私は考えております。
後者の書き方の場合、1つのセミコロンであることが明確です。
ただし、この書き方にも問題があります。3つコマンドを連結する場合、
3つのコマンドを1つのセミコロンで区切るのか、という矛盾です。

普通の読み手ならば、気づきもしないこのような細かいところを考え、
読み手が一度読めばすんなり理解できるように文章を書く、というのが
テクニカルライターの仕事です。

和文
プログラムデータの一覧表示、データ編集、データソート処理を行なう事が出来ます。
Ambiguous
You can view the list of program data, edit data, and sort data.

和文をそのまま上記のように訳すと、「edit data」と「sort data」が果たして
述語なのか目的語なのか分かりづらくなってしまいます。
つまり、上記の英文は、ちょっと英語としてはおかしいが、
「プログラムデータ、編集データ、ソートデータの一覧を表示することができます。」
と誤解される恐れがあります。
Clear
You can edit data, sort data, and view the program data list.

このように言葉の順番を変えるだけでかなり明瞭になります。
他の書き方も以下に示しておきます。

You can view the list of program data. You can also edit and sort data.

You can (1) view the list of program data, (2) edit data, and (3) sort data.
例えば、次のような和文があったとします。

和文:

    何らかのエラーが起きたときに警告ブザーを鳴らすか否かを選択します。

英文:

    Select whether to sound a buzzer when some kind of error occurs.

上記のセンテンスでも十分通じると思いますが、ちょっと工夫することで
より親切なセンテンスになります。

親切な英文:

    Select whether or not to sound a buzzer when some kind of error occurs.

最初のセンテンスでは、読み手はセンテンスを読み終えるまで、
「whether or not」の「or not」が省略されているということが分かりません。
つまり、センテンスの途中では、「警告ブザーを鳴らすかまたは警告ランプを
点灯するか」というような展開になるかもしれないと読み手は無意識に
考えるわけです。一般の文章では、「or not」がよく省略されていますが、
テクニカルライティングでは入れた方がよいと私は考えます。
これは、テクニカルコミュニケーションの原則の1つである「be complete」に
該当すると思います。

次回は、テクニカルコミュニケーションの原則について書きたいと思います。

テクニカルライティングでは、極力誤解をされないように、明瞭な文章を書く
必要があります。

例えば、ある装置をパソコンから制御する通信コマンドで、次のような
コマンドの説明があったとします。

和文:
タイムスタンプを保存するかどうかを設定/問い合わせします。

現在形の英文:
Sets or queries whether or not timestamps are stored.

このように書くと、「Sets」に対しては誤解は生じませんが、
「queries」に対しては、「タイムスタンプが保存されているかどうか」と
誤解される可能性があります。

未来形の英文:
Sets or queries whether or not timestamps will be stored.

このように書くと「queries」に対しても、「タイムスタンプが保存されているかどうか」と
誤解される可能性はなくなります。

[注釈]
Microsoft Manual of Style Third Edition にも書かれているように
テクニカルライティングでは、過去形や未来形よりも現在形の方が読みやすいです。
従って、現在形が基本なのですが、ここでは誤解を招かないように未来形を
使う例を示しています。

Today, I would like to write about the English translation for the phrase
"前回(パケットを)送信した時刻からの経過時間."
This phrase appeared in a specification document for a proprietary
communication protocol.

Unclear and maybe ambiguous (my translation, yikes!)
the elapsed time from the previous transmission
(This could be misinterpreted to mean the elapsed time information that was included in the previous packet.)

Clearer
the elapsed time since the previous transmission

Clearest (a suggestion from the Japanese-to-English Prestidigitator)
the amount of time that has elapsed since the previous transmission